建設業許可完全ガイド(令和3年版)

建設業許可が必要な方

建設業には許可がなくてもできる工事があります。これを「軽微な工事」といいます。

「軽微な工事」に該当しない工事を請け負う場合には建設業の許可が必要となります。ちなみに、法人・個人を問わず建設業許可の申請は可能です。

『個人事業でも【建設業許可】はとれるの?』

では、どんな工事が「軽微な工事」に該当するのかというと、下図のとおりです。


建築一式工事

⑴1件の請負代金が1,500万円未満の工事(消費税を含んだ額)
⑵請負代金の額にかかわらず、木造住宅で延面積が150㎡未満の工事(主要部分が木造で、延面積が1/2以上の居住用)

建築一式工事以外の工事1件の請負代金が500万円未満の工事(消費税を含んだ額)

つまり、建築一式工事なら税込金額1,500万円以上の工事を請け負う場合に許可が必要となり、それ以外の工事なら税込金額500万円以上の工事を請け負う場合に許可が必要ということです。

 

建設業の種類

建設業には下図のように全部で29業種あります。

「建設工事の種類」と「建設業の種類」って何が違うの?と思われるかもしれませんが、建設業法という法律で「建設工事」と「建設業」をそれぞれ別の意味で定義しているので、正確を期すために二つ別々に書いてあるんですね。

これから、どの許可を取得するのかを決める際に参考にして下さい!

略号建設工事の種類建設業の種類内 容例 示
土木一式工事土木工事業 総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事 (補修、改造又は解体する工事を含む。以下同じ。) トンネル工事、橋梁工事、ダム工事、護岸工事などを一式として請負うもの。 そのうちの一部のみの請負は、それぞれの該当する工事になる。
建築一式工事建築工事業 総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事 建物の新築工事、増改築工事、建物の総合的な改修工事等、一式工事として請負うもの。 (建築確認を必要とするもの。)
大工工事大工工事業 木材の加工又は取付けにより工作物を築造し、又は工作物に木製設備を取付ける工事 大工工事、型枠工事、造作工事
左官工事左官工事業 工作物に壁土、モルタル、漆くい、プラスター、繊維等をこて塗り、吹付け、又ははり付ける工事 左官工事、モルタル工事、モルタル防水工事、吹付け工事、とぎ出し工事、洗い出し工事
とび・土工・コンクリート工事とび・土工工事業 足場の組立て、機械器具・建設資材等の重量物の運搬配置、鉄骨等の組立て等を行う工事
くい打ち、くい抜き及び場所打ぐいを行う工事
土砂等の掘削、盛上げ、締固め等を行う工事
コンクリートにより工作物を築造する工事
その他基礎的ないしは準備的工事
とび工事、ひき工事、足場等仮設工事、重量物のクレーン等による揚重運搬配置工事
くい工事、くい打ち工事、くい抜き工事、場所打ぐい工事
土工事、掘削工事、根切り工事、発破工事、盛土工事
コンクリート工事、コンクリート打設工事、コンクリート圧送工事、プレストレストコンクリート工事
地すべり防止工事、地盤改良工事、ボーリンググラウト工事、土留め工事、仮締切り工事、吹付け工事、法面保護工事、道路付属物設置工事、屋外広告物設置工事、捨石工事、外構工事、はつり工事、切断穿孔工事、アンカー工事、あと施工アンカー工事、潜水工事

ところで、「土木一式工事」「建築一式工事」にだけ「一式」ということばが付いてますね。土木一式も建築一式も「総合的な企画、指導、調整のもとに」と書いてあることから、大規模な工事が想定されていて、元請け業者として受注することが前提とされる工事です。

ちなみに、「一式」と書いてあるから全部の工事ができるの?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、そういうことではありません。元請け業者として大規模工事を受注し、企画・指導・調整をもとに、各専門業者に工事を発注していくイメージになります(一括下請けは禁止ですよ!)。

建設工事に含まれない作業

なお、以下の作業は建設工事に含まれませんのでお気をつけ下さい。

  • 樹木の剪定、除草、伐根、伐採
  • 除雪
  • 測量、設計、地質調査
  • 電気設備・消防施設の保守点検業務
  • ビル清掃などの清掃業務
  • 建設機械のリース(オペレーターが付かない)
  • 船舶や航空機など、土地に定着しない堂さんの築造、設備機器取付
  • 道路維持管理業務委託
  • 自社施工

許可の種類(知事許可と大臣許可)

建設業許可には都道府県知事許可(知事許可)と国土交通大臣許可(大臣許可)があります。

  1. 知事許可…1つの都道府県内にだけ営業所を持ち、営業する場合
  2. 大臣許可…2つ以上の都道府県に営業所を持ち、営業する場合

 ここでいう「営業所」とは、①請負契約の見積り、入札、契約締結等の実態的な業務を行っていて、②電話・机・各種事務台帳等を備え、居住部分等とは明確に区分された事務室が設けられており、③経営管理責任者又は令3条の使用人が常勤しており、④専任技術者が常勤しているような営業所を言います。

なので、支店登記したからと言って直ちにこの「営業所」に該当するわけではなく、あくまで請負契約締結等を行う事務所が「営業所」に該当しうるということです。

許可の区分(特定と一般)

先ほどは、1つの都道府県で営業するか、2つ以上の都道府県で営業するかによって知事許可と大臣許可に分かれますよ、というお話でした。今度は、どのくらいの金額を下請に出すかによって「一般」と「特定」に分かれますよ、というお話になります。

元請業者として、工事の一部を下請に出す場合で、その契約金額(複数の下請業者に出す場合はその合計額)が4,000万円(建築一式工事の場合6,000万円)以上になる場合には「特定」建設業許可になります。それ以外の場合には「一般」建設業許可になります。

許可要件

許可を受けるためには下記の許可要件をクリアしないといけません。

  1. 経営管理責任者がいること
  2. 専任技術者がいること
  3. 請負契約に関して誠実性を有していること
  4. 財産的基礎があること
  5. 欠格要件等に該当しないこと

 では、順番に解説していきましょう。

1.経営管理責任者がいること

経営管理責任者とは、建設業を行う上で、経営の管理を行うポジションのことです。建設業は受注金額が大きくなることが多いことから、工事にかかわる方々が安全な取引ができるように、経管を置くこととしています。

基本的には、常勤役員許可を受けようとする建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する、又は、許可を受けようとする建設業以外の建設業に関し6年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する場合に経管になれます。

詳細はこちらの記事をご覧下さい。
『【経営業務の管理責任者とは?】わかりやすく解説します』

また、令和2年10月の法改正で経管の要件が緩和されました。詳しくはこちらをご覧下さい。
『経営管理責任者の要件緩和(令和2年10月改正)』

2.専任技術者がいること

専任技術者とは、工事をする上で技術上の統括責任者のことです。略して「専技」と呼ばれています。例えば、何の技術もない人が家を建てたら大変なことになりかねないですよね?このように、建設工事は技術力がないと危ないので、ちゃんと技術面の管理ができる人がいないといけませんよ、と言うことになっているんですね。

いずれかに該当している場合に専任技術者になれます。

① 一定の経験がある

 イ 高校、中等教育学校、専門学校(1年制)を卒業⇒5年以上の実務経験を有する者
 ロ 大学(短期大学、高専、旧専門学校を含む)、専門学校(2年制)を卒業⇒3年以上の実務経験を有する者
 ハ 学歴にかかわらず10年以上の実務経験を有する者

※卒業した学校や学科が指定学科に該当している必要があります。また、大学卒業の場合には履修科目等も関係します。
※特定建設業許可を取得しようとする場合、これらの経験+元請けとして4,500万円以上の工事について2年以上の指導監督的な実務を有することが必要です。

② 国家資格等を有している

※なお、土木工事業、建築工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、電気工事業、造園工事業で特定建設業許可を取得しようとする場合には、一級の国家資格者、技術士の資格者でなければなりません。

 なお、専任技術者の詳細はこちらの記事をご覧下さい。
『【専任技術者とは?】わかりやすく解説します』

3.請負契約に関して誠実性を有していること

誠実性って抽象的な表現ですが、法人・法人の役員等、個人事業主・支配人、支店長・営業所長が、請負契約に関し不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないことが必要になります。

具体的に、「不正な行為」とは、請負契約の締結又は履行の際における詐欺、脅迫、横領等の法律に違反する行為を指します。そして、「不誠実な工事」とは、工事内容・工期等、請負契約に違反する行為を指します。

また、建設業法、建築士法、宅建業法等で「不正な行為」又は「不誠実な行為」を行ったことにより、免許等の取消処分を受け、あるいは営業の停止等の処分を受けて5年を経過しない者は、誠実性のない者として取り扱われます。

4.財産的基礎があること

【一般建設業の場合】
次のいずれかに該当することが必要です。
① 自己資本が500万円以上あること。
② 500万円以上の資金調達能力があること。
③ 直前5年間許可を受けて継続して営業した実績があること。
 ※ 「自己資本」とは貸借対照表の純資産合計の額のことです。
 ※ 「資金調達能力」は預金残高証明書や融資可能証明書等で判断します。
 ※ ③は更新の際に使えそうですが、初回の更新時には使えません。
【特定建設業の場合】
次のすべてに該当することが必要です。
① 欠損の額が資本金の20%を超えないこと。
② 流動比率が75%以上であること。
③ 資本金が2,000万円以上であること。
④ 自己資本が4,000万円以上あること。
 ※ 新規設立の場合、資本金額が4,000万円以上あれば上記の要件を満たします。
 ※ ①は、貸借対照表の純資産の部に計上されている「繰越利益剰余金」がプラスの場合は要件を満たします。
 ※ 流動比率とは流動資産÷流動負債×100で求められる値です。この値が75%以上になっていれば要件を満たします。

5.欠格要件等に該当しないこと

下記のいずれかに該当するものは,許可を受けられません。
イ 許可申請書又は添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、又は重要な事実の記載が欠けているとき。
ロ 法人・法人の役員等、個人事業主・支配人、その他支店長・営業所長等が、次のような要件に該当しているとき。
 ① 心身の故障により建設業を適正に営むことができない者として国土交通省令で定めるもの又は破産者で復権を得ない者
 ② 不正の手段で許可を受けたこと等により、その許可を取り消されて5年を経過しない者
 ③ 許可の取り消しを逃れるために廃業の届出をしてから5年を経過しない者
 ④ 建設工事を適切に施工しなかったために公衆に危害を及ぼしたとき、あるいは危害を及ぼすおそれが大であるとき、又は    請負契約に関し不誠実な行為をしたこと等により営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
 ⑤ 禁固以上の刑に処せられその刑の執行を終わり、又はその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
 ⑥ 建設業法、建築基準法、労働基準法等の建設工事に関する法令のうち政令で定めるもの、若しくは暴力団員による不当な行為の防止に関する法律の規定に違反し、または刑法等の一定の罪を犯し罰金刑に処せられ、刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
 ⑦ 暴力団員等(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者)
 ⑧ 暴力団員等がその事業活動を支配する者

まとめ

以上、建設業許可の全体像を解説しました。非常に細かい規定が多く、理解するにも一苦労と言った印象を受けたと思います。許可要件をすべて満たしていることがポイントになります。要件を満たしているかどうかは会社さん次第でまちまちです。「結局うちの会社は許可とれんの?」と思った方は是非ご相談下さい。

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